Proteinase Kを使ったジェノタイピング用のDNA抽出法のプロトコールを紹介します。
Proteinase K (プロテイナーゼ K)とは
1974年に、Engyodontium albumから抽出されたセリンプロテアーゼの一種です。
かなり強いタンパク質分解活性をもっており、核酸分解酵素も含めてタンパク質を分解するので、核酸抽出によく用いられます。
60℃、pH 8.0付近で最も高い酵素活性があり、95℃10分間で失活します。
プロトコール
まずProteinase Kを 20mg/mlの濃度で準備します。
Proteinase K用のバッファーを準備します。
最終濃度 | 100ml当たり | |
1M Tris pH 8.0 | 10mM | 1ml |
5M NaCl | 100mM | 2ml |
0.5M EDTA pH 8.0 | 10mM | 2ml |
10% SDS | 0.5% | 5ml |
精製水 | 100ml へメスアップ |
500ulのバッファーに対してProteinase K(20mg/ml)を10ul加えます。
- マウスの組織(しっぽや耳)を2mm角ぐらいの大きさに切除し、1.5mlエッペンドルフチューブに入れる。
- 上記のバッファーを500ul加える。
- 55℃でオーバナイト。
- 6M NaCl を250ul加え、ボルテックス。on iceで10分間インキュベートする。
- 1000rpmで5分間遠心し、上清を新しいエッペンドルフチューブに移す。
- 650ulのイソプロパノールを加え、よく撹拌する。室温で15分静置。
- 14000gで15分間遠心し、上清を捨てる。
- エッペンドルフチューブの蓋を開けて、5-10分程度乾燥させる。
- 100ulのTEバッファーを加え、55℃で10分インキュベートする(DNAが溶けない場合は優しくピペッティングする)。
もう少しきれいなDNAが欲しい場合には、ここからさらにフェノクロエタ沈をすると良いと思います。
他のDNA精製法との比較
DNAの精製度としては
NaOH法 < Proteinase K 法 < カラム法
ですが、コストも
NaOH法 < Proteinase K 法< カラム法
の順で高くなります。
カラム法で抽出したDNAでないとPCRがかからなかったり、逆に、NaOHで抽出したDNAでもきれいにPCRがかかったりすることがあります(プライマーやポリメラーゼの性能などにも左右されます)。
もしもPCRがかかりにくい場合はコストを考えながらDNA精製度を上げると上手くいくことがあります。
NaOHを使った未精製DNA抽出法は下記のリンクをご覧ください。
こちらの方が安いですし、手間もかかりません。
尻尾や耳などの組織以外にも、血液のPBMCからもPCR用のDNAサンプルを抽出することができます。
そのためには、赤血球をあらかじめ除去する必要がありますので、
RBC lysis bufferが必要になります。
RBC (ACK) lysis buffer の作り方とその原理【実験プロトコル】
このサイトでは他にも色々な実験プロトコールや試薬の作り方についてまとめています。
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