DNAポリメラーゼって結構高いですよね。
この記事では簡単にTaq DNAポリメラーゼやPfu DNAポリメラーゼを自作する方法を紹介しています。
PCRのコスト
私が調べる限りで一番安いんじゃないかと思っているのが、NEBのTaq DNA PolymeraseかプロメガのGoTaqです。ここではGoTaqを例にしてコストを算出します。
プロメガクラブで販売されているGoTaq 100 unit (M3001) が会員割引価格で4500円です。
説明書には50μlの系で1.25 unitを使うように書いてありますが、いつも市販のPCR試薬はだいたい20μlぐらいまで減らして使っています。20μlの系として0.5 unit/reactionとなります。
これから計算すると、PCR 1反応あたり22.5円ということになり、pfuについてはもっと高くなります。
塵も積もれば山となるではないですが、ジェノタイピングなどで毎日大量のPCRをしないといけないラボにとっては馬鹿にできない金額になってきます。
cDNAの入手方法
まずcDNAをゲットしないといけませんが、Taq DNA polymeraseはこちらで手に入れることができます。
また、AddgeneではPfuのコンストラクトも手に入れることができます。
Pfu DNA polymeraseはこちらです。
いずれも大腸菌での発現系で、1万円弱で購入することができます。
NCBIのデータはこちらでにもありますので、合成でオーダーすることもできます。
DNAポリメラーゼの精製方法
上で紹介したAddgeneのコンストラクトはHisタグつきなので、アフィニティークロマトグラフィーで精製可能です。
またDNAポリメラーゼならではの性質を使うことによって、DNAポリメラーゼはタグなしでも精製可能です。
DNAポリメラーゼは高温で安定なので、75℃で高温処理することによって、その他のタンパク質を変性させて除くことができます。
詳しくはこちらの文献を参考にしてください。
バッファーについて
精製したポリメラーゼを保存するバッファーとPCR反応バッファーの組成を紹介します。
ポリメラーゼ保存バッファー
20 mM Tris-HCl , 0.1 mM EDTA, 1 mM DTT, 100 mM KCl, pH 7.4
安定化剤として 200 μg/ml BSA(nuclease free), 50% glycerolを加えることもできます。
PCR反応バッファー
PCR反応のバッファーは、すでに購入した市販の試薬の残りを使ってもらっても構わないですが、それぞれのポリメラーゼバッファーの組成を参考までに載せておきます。
あくまで参考ですので、これを基本としてDMSOや硫酸アンモニウムなどを加えたりして最適化するとPCR効率も良くなるかもしれません。
Taq DNAポリメラーゼのバッファー
10x Taq DNAポリメラーゼバッファー(10倍濃縮)
100 mM Tris-HCl, 500 mM KCl, and 15 mM MgCl2, pH 8.3
その他にも200mM Trisとしてあったり、20mM MgCl2だったり、0.1%のゼラチンを加えているものもあるようです。
pfu DNAポリメラーゼのバッファー
10x pfu DNAポリメラーゼバッファー(10倍濃縮)
200mM Tris-HCl , 100mM KCl, 100mM (NH4)2SO4, 20mM MgSO4, 1.0% Triton® X-100, 1mg/ml nuclease-free BSA, pH 8.8
実際の使用例
実際のPCR反応(50μl)は次のようにします。
volume | 最終濃度 | |
10x Buffer | 5.0 μl | |
dNTP 10mM each | 1.0 μl | dATP, dCTP, dGTP, dTTPがそれぞれ200μM |
Primer F | A μl | 0.1–1.0μM |
Primer R | B μl | 0.1–1.0μM |
DNAポリメラーゼ | C μl | 1.25 unit |
テンプレート | D μl | |
ddH2O | 44-A-B-C-D μl | |
合計 | 50 μl |
DNAポリメラーゼのユニットについて
DNAポリメラーゼのユニットの調整が一番難関で、重要なポイントだと思います。
DNAポリメラーゼのユニットは
1ユニットは、「75℃で30分間に10ナノモルのdNTPsを「acid insoluble material」に取り込むのに必要な酵素量」と定義されているそうですが、よく分かりませんね。
分子生物学の教科書である
Molecular Cloning: A Laboratory Manualによると、市販のTaqの場合は ∼80,000 Units/mg となっているみたいなので、この量を参考にするとよいかもしれません。
Taqの場合は多少量がずれても大きな問題ないかもしれませんが、Pfuの場合は3 ́→5 ́ エクソヌクレアーゼ活性(プルーフリーディング)のため、注意しなくてはいけません。
Pfuの場合はだいたい1.25 unitあたりを推奨されていますが、多すぎると3 ́→5 ́ エクソヌクレアーゼ活性によってプライマーが分解されてしまう恐れがあります。
PromegaのPfuポリメラーゼの説明書にはPfuの活性は次のようにして測っていると書いてあります。
この他に手軽にできる方法としては、ポリメラーゼの希釈系列を作ってリアルタイムPCRなどで最適な濃度を出すかとかできるかもしれません(私はここまでやったことはないです)。
一度作ってしまえば、半永久的な量のDNAポリメラーゼを得ることができますので、ここが頑張りどころです。
まとめ
Taq DNAポリメラーゼとPfu DNAポリメラーゼを自作する方法について紹介しました。
今後の経費削減のためにも、大腸菌からのタンパク質発現を取り扱っているラボなら試してみる価値はあると思います。
コメント