激安でプラスミドを抽出できるアルカリ溶解法(アルカリSDS法)とその原理について【実験プロトコール】

実験プロトコル

大腸菌のミニプレップのキットは便利ですけど高いですよね。

キットの王様Qiagen社のQIAprep Spin Miniprep Kit は250サンプルで53,000円します。市販のミニプレップキットで一番安いと謳われている日本ジェネティクスのFastGene PlasmidMiniは300サンプルで25000円です(もっと安いキットがあれば教えて下さい)。

計算すると1サンプルあたり、だいたい100円から200円前後かかってしまいます。数サンプルであれば全然問題ないのですが、大量の大腸菌を毎日扱う研究室にとっては、この積み重なる費用は馬鹿になりません。

今回紹介するアルカリ溶解法を使うことで、ミニプレップにかかるコストをかなり削ることができると思います。

またアルカリ溶解法でなぜプラスミドDNAだけが抽出できるのか、その原理も合わせて解説したいと思います。

アルカリ溶解法(アルカリSDS法)

アルカリ溶解法は1979年に発表されたプラスミド抽出法で、簡便でよく使われてきた方法です。

原文はこちらです。

A rapid alkaline extraction procedure for screening recombinant plasmid DNA - PubMed
A procedure for extracting plasmid DNA from bacterial cells is described. The method is simple enough to permit the analysis by gel electrophoresis of 100 or mo...

大腸菌には染色体DNAはプラスミドDNAがあります。どちらもDNAですが、どうやってこの2つを分離しているのでしょうか?

原理は次のように説明できます。

DNAはpHを低くすると、塩基間の水素結合が崩壊します。徐々にpHを戻すと二本鎖に戻ることができますが(可逆的)、急にpHを元に戻すと、分子量の大きいDNAはこの変化に対応しきれずに不可逆的に変性したままで残ってしまいます。

このアルカリ抽出法でプラスミドだけ抽出できるのは、分子量が大きい染色体は変性しやすく、分子量が小さいプラスミドは変性しにくい性質を利用しています

準備するもの

溶液を3種類用意しないといけません。

溶液 Ⅰ (4℃で保存可能)

1M Tris-HCl, pH8.02.5 ml
0.5M EDTA pH8.02 ml
グルコース0.9 g
MilliQtotal 100 ml
終濃度は50 mM グルコース、25 mM Tris-HCl、10 mM EDTAです。

溶液 II(室温で数日は使用可能)

10N NaOH溶液0.2 ml
10% SDS溶液1 ml
MilliQtotal 10 ml
終濃度は0.2 N NaOH、1% SDSです。

溶液 III (4℃で保存可能)

5M KOAc(酢酸カリウム)溶液60 ml
酢酸11.5 ml
MilliQ28.5 ml
オートクレーブしてから保存して下さい。

プロトコール

溶液Iと溶液IIIは4℃、溶液IIは室温に置く。

  1. 大腸菌を一晩培養する
  2. 1.5mlエッペンドルフチューブに移して、15,000 rpm、5 分間遠心して上清を捨てる。
  3. 収量を上げたい場合には同じチューブに大腸菌培養液を入れて、2を繰り返す。
  4. 100ulの溶液Iを加えて、ペレットを溶解し、15分間氷上で静置。
  5. 200ulの溶液IIを加えて、ゆっくりと転倒混和し、約5分間氷上で静置(DNAの水素結合を破壊)。ボルテックスはゲノムDNA混入の原因になるので禁止。5分以上置くと、プラスミドも変性してしまうので5分以内で処理しましょう。
  6. 150ulの溶液IIIを加えて、しっかりと転倒混和する(白い沈殿に染色体DNAがある)。このときもボルテックスは禁止。
  7. 15,000 rpmで 10 分間遠心し、上清を新しい1.5mlチューブへ移す(上清にプラスミド)。
  8. 等量のイソプロパノールを加えて混合し、15,000 rpmで 10 分間遠心する(沈殿がプラスミド)。
  9. 上清を捨てて、1mlの70%エタノールを加え15,000 rpmで 10 分間遠心する(沈殿がプラスミド)。
  10. 上清をギリギリまで捨てて、風乾させる。
  11. 適量(50ulから100ulぐらい)のTEバッファーで溶解する。

この方法では、リボソームRNAが大量に混入していますので粗な精製です。電気泳動をしてもリボソームRNAが写ってしまい、吸光度を測っても正確ではありませんが、PCRのテンプレートとしては十分な精製度です。

もっときれいなプラスミドが欲しい場合にはStep 10のところで10ug/mlのRNAseを加えて、フェノクロエタ沈するときれいなプラスミドになります。

まとめ

氷上に置いたり、風乾させたりするステップで少し時間がかかってしまいますが、その他のステップは市販のミニプレップキットと大きく時間は変わらないと思います。

最初にこの方法を始める時はいくつかの試薬をそろえないといけませんが、一回買ってしまえば長期間激安でミニプレップすることができます。

では市販のキットは不要になるかというと、そうはならないでしょう。トランスフェクションなどで純度の高いプラスミドが必要なときには市販のミニプレップキットの方が良い場合もあります。「クローニングのスクリーニングではアルカリ溶解法を使う」などというように、それぞれの方法の利点を生かして使い分けをすると良いかと思います。

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