アガロースを電気泳動するときにバッファーはどのように選んでいるでしょうか?
おそらく大部分の方がTAEバッファーかTBEバッファーを使っていると思いますが、上手に使い分けられているでしょうか?
この記事ではTAEバッファーとTBEバッファーの組成、さらにそれぞれのバッファー特徴を比較して解説しています。
まずそれぞれのバッファーの作り方について下記にまとめています。
TAEバッファーの作り方
50x TAEバッファーのレシピです。
終濃度 | ||
Tris | 242 g | 2 M |
氷酢酸(Acetic acid) | 57.1 mL | 2 M |
EDTA・2Na (2H2O) | 18.6 g | 0.05 M |
蒸留水 | to 1 L |
使う時に50倍希釈してください。
1x の濃度はTris-acetateが40 mM, EDTAが1 mMとなります。
TBEバッファーの作り方
10x TBEバッファーのレシピです。
試薬 | 終濃度 | |
Tris | 121.1 g | 0.89 M |
EDTA・2Na (2H2O) | 3.7 g | 0.02 M |
ホウ酸(Boric acid) | 61.8 g | 0.89 M |
蒸留水 | to 1 L |
使う時に10倍希釈して下さい。
1x の濃度はTris-borate 89 mM, EDTA 2 mM となります。
TAEバッファーとTBEバッファーの違い
TAEとTBEの違いと特徴についてまとめました。
DNAの回収率
DNAの回収率はTAEの方がTBEよりも優れています、、、と言われていますが、私はこれで実際に困ったことはありません。
キットの性能も上がってきているので、TBEを使っていたからDNAが回収できなくてクローニングできなかったということはありませんでしたので、大きな問題にはならないと思います。
バンドの解像度
バンドの解像度(シャープさ)においてはTBEの方がTAEよりも優れています。
特に1000bp以下はTBEの方が解像度が良くなります。
10kb以上の場合はTAEの方が分離が良い、、、とも言われていますが、10kb以上のDNAを流すことは稀ですのであまり実感したことはないですね。
ちなみに100bp以下を分離させたい時は、より孔のサイズが小さいアクリルアミドゲルがオススメです。
緩衝能力、泳動速度
TBEの方がTAEよりもイオン強度が高く、緩衝能力も優れています。
TBEがイオン強度が高いので、泳動速度も早いです。
TAEはイオン強度が低い→泳動速度が遅い→泳動時間が長い→バッファーの温度が上がる→バッファーが蒸発しやすい→泳動が均一ではない(スマイリングしやすい)ということになります。
TAEバッファーで長時間の泳動するときには、緩衝能力が低いので時々バッファーをかき混ぜて、陽極と陰極のバッファーを拡散させるとよいでしょう。
価格
価格の点ではTAEバッファーがTBEよりも圧倒的に安いです。
TAEバッファーとTBEバッファーの価格の違いを既製品で比較してみましょう。
ニッポンジーンさんのホームページを参照していますが、TAEバッファーとTBEバッファーはどちらも9000円で販売されていますが、明らかに量が違いました。
TAEバッファーが25L分作れるのに対して、TBEバッファーは5L分です。
つまりTAEバッファーの方がTBEバッファーよりも5倍安いことになります。
まとめ
TAEバッファーとTBEバッファーについてまとめました。
価格の面ではTAEに軍配が上がりますので、個人的にはルーチンの電気泳動ではTAEを使い、
論文のFigureを作る目的などで1000bp以下のバンドをキレイに見せたい時はTBEバッファーを使うとよいかなと思います。
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