この記事では大腸菌の液体培地の組成の違いと作り方、そして時々忘れてしまう、大腸菌選択用の抗生物質濃度の目安を書いています。
最近は調整済の既製品があるので、自分で最初から作ることは少なくなっているかもしれませんが、何かのお役に立てれば幸いです。
大腸菌の液体培地の組成
LB培地
一般的な大腸菌の液体培養に使われます。
トリプトン | 10 g |
Yeast extract (酵母抽出エキス) | 5 g |
NaCl | 10 g |
蒸留水 | 1 L |
混ぜた後にオートクレーブします。
2x YT培地
バクテリオファージやM13ファージの培養、保存に適した培地と言われています。
トリプトン | 16 g |
Yeast extract (酵母抽出エキス) | 10 g |
NaCl | 5 g |
蒸留水 | 1 L |
混ぜた後にオートクレーブします。
Terrific Broth(TB)培地
LB培地よりも栄養価が高く、大腸菌の密度が高くなると言われています。
トリプトン | 12 g |
Yeast extract (酵母抽出エキス) | 24 g |
グリセロール | 8 ml |
K2HPO4 | 9.4 g |
KH2PO4 | 2.2 g |
蒸留水 | 1 L |
混ぜた後にオートクレーブします。
SOC培地
形質転換後の回復用の培地として使われます。
トリプトン | 20 g |
Yeast extract (酵母抽出エキス) | 5 g |
NaCl | 0.5 g |
蒸留水 | 1 L |
混ぜた後にオートクレーブします。十分に温度が下がってから次の試薬を入れます。
1M グルコース溶液(滅菌済) | 20 ml |
1M MgCl2溶液(滅菌済) | 10 ml |
1M MgSO4溶液(滅菌済) | 10 ml |
SOB培地はSOCからグルコースを抜いたものです。
大腸菌用の特殊な試薬
これらも調整済みの既製品を使うことが多いと思いますが、念のため組成と作り方を書いておきます。
IPTG
大腸菌のラクトースオペロンを使って発現誘導するときに使います。
1Mのストックの作り方です。
Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside (IPTG) | 2.38 g |
蒸留水 | 10 ml |
滅菌フィルターを通して分注し、-20℃で保存します。
X-gal
大腸菌の青白セレクションの時に使います。
5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactoside | 100 mg |
ジメチルホルムアミド | 5 ml |
滅菌はいりませんが、遮光する必要があります。
大腸菌の選択用の抗生物質の濃度の目安
抗生物質濃度のだいたいの目安です。
抗生物質の種類 | 略称 | 溶媒 | ストックの濃度 (mg/ml) | 使用濃度 (μg/ml) |
アンピシリン(Ampicillin) | ABPC, Amp | 蒸留水 | 100 | 100 |
カナマイシン | Kam, KM | 蒸留水 | 50 | 20 – 50 |
ネオマイシン | Neo, NM | 蒸留水 | 50 | 10 |
ゼオシン(Zeocin) | Zeo | 蒸留水 | 100 | 25 |
ストレプトマイシン(Streptomycin) | SM | 蒸留水 | 20 | 20 |
スペクチノマイシン(Spectinomycin) | SPCM | 蒸留水 | 100 | 100 |
ハイグロマイシB (Hygromycin B) | Hy | 蒸留水 | 100 | 100 |
テトラサイクリン | TC | エタノール | 20 | 20 |
クロラムフェニコール | CP | エタノール | 100 | 30-100 |
エリスロマイシン (Erythromycin) | EM | エタノール | 1 | 1 |
リファンピシン (Rifampicin) | RFP | エタノール | 1 | 1 |
耐性をもつ抗生物質は常に入れ続けていないと、コンタミが増えたり、目的のプラスミドが不安定になる(プラスミドが大腸菌から抜けてしまう)可能性があります。
常に入れ続ける方が安全です。
それと、抗生剤の活性が下がりますので、培地の温度が下がってから入れるようにしましょう(人肌ぐらいの温度と言われています)。
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