【タンパク質精製】タグ切断配列、プロテアーゼのまとめと解説【アミノ酸とDNA配列一覧あり】

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分子生物学

組み換えタンパク質精製でアフィニティータグをつけることがほとんどだと思いますが、

本来は、タグは目的のタンパク質には必要がない配列です。

例えば、His-tag付きのタンパク質を動物に免疫して抗体を作ろうとした時に、

抗His-tag抗体ができてしまったという話もありますので、理想的にはタグは無いに越したことがないです。

これらのアフィニティータグはプロテアーゼで切断することにより、除去することができます。

この記事では、タンパク質精製の際によく用いられるプロテアーゼについて、利点と欠点などをまとめましたので共有したいと思います。

また、アミノ酸の認識配列(切断部位)やDNA配列も参考までに一覧にしていますので、コンストラクト作成の際にも使ってください。

もし、他にもこのリストに載せて欲しいものがありましたら、コメント欄にリクエストをお願いします。

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プロテアーゼ切断配列の大きさとシークエンス(アミノ酸、DNA)


プロテアーゼ

アミノ酸数
      サイズ
アミノ酸シークエンス(↑のところで切断されます)
DNAシークエンス(参考)
Thrombin6     627.8 DaLVPR↑GSCTGGTGCCACGCGGTAGT
Enterokinase5606.5 DaDDDDK↑GATGACGATGACAAG
Factor Xa4473.5 DaIEGR↑ATCGAAGGTAGG
TEV protease7884.0 DaENLYFQ ↑(S/G/A/M/C/H)、Sが一番切断効率が良いですGAAAACCTGTATTTTCAGTCC
HRV3c protease   8902.1 DaLEVLFQ↑GPCTGGAAGTTCTGTTCCAGGGGCCC
PreScission protease8902.1 DaLEVLFQ↑GPCTGGAAGTTCTGTTCCAGGGGCCC
SUMO protease96      11.0  kDaDSEVNQEAKPEVKPEVKPETHINLKVSDGSSEIFFKIKKTTPLRRLMEAFAKRQGKEMDSLTFLYDGIEIQADQTPEDLDMEDNDIIEAHREQIGG↑GACTCAGAAGTCAATCAAGAAGCTAAGCCAGAGGTCAAGCCAGAAGTCAAGCCTGAGACTCACATCAATTTAAAGGTGTCCGATGGATCTTCAGAGATCTTCTTCAAGATCAAAAAGACCACTCCTTTAAGAAGGCTGATGGAAGCGTTCGCTAAAAGACAGGGTAAGGAAATGGACTCCTTAACGTTCTTGTACGACGGTATTGAAATTCAAGCTGATCAGACCCCTGAAGATTTGGACATGGAGGATAACGATATTATTGAGGCTCACCGCGAACAGATTGGAGGT

プロテアーゼについて

プロテアーゼ処理の一般的なコツと注意点

・プロテアーゼに目的タンパク質と同じタグがついている場合には、カラム上(on column)で精製することができます。

・温度、反応時間、バッファー組成など最適化が必要です(下にバッファーや反応条件を載せていますが、あくまで当たりをつけるための目安として下さい)。

・推奨の酵素濃度よりも高すぎると、非特異的な切断が起きてしまいます。

・プロテアーゼは、なるべく目的タンパク質とサイズが大きく異るものを選びましょう(SDS PAGEでタグの除去効率をチェックするため)。

・プロテアーゼ処理のときにはPMSFやAEBSFなどのプロテアーゼ阻害剤は使えません(耐性があるものもあります)。

・目的タンパク質の安定性やプロテアーゼの活性を保つために、塩濃度に注意して下さい。

各種プロテアーゼについて解説(利点や欠点など)

Thrombin(alpha-Thrombin, トロンビン)

トロンビンは、元々は凝固止血の時に働く酵素です。

α-トロンビンは 6kDaの軽鎖と、31kDaの重鎖がS-S結合でつながっているので、還元剤は使うことができません。

50 mM Sodium Citrate, 0.2 M NaCl, 0.1% PEG-8000, pH 6.5

1mgの目的タンパク質あたり、0.5Uのトロンビンを目安にしてください。

室温25℃ 3時間または4℃でオーバーナイト

Enterokinase(エンテロキナーゼ)

エンテロキナーゼの切断配列は「DDDDK↑」ですが、このアミノ酸配列を見てピンと来た方もいると思いますが、FLAG-tag「DYKDDDDK」の一部となっています。

エンテロキナーゼとFLAG-tagのセットで使うのがいいでしょう。

目的タンパク質のN末端にFLAG-tagをつけて、エンテロキナーゼで切断することによって、

余分なアミノ酸が付加されていないタンパク質を得ることができます。

sigmaaldrichのホームページよりhttps://www.sigmaaldrich.com/deepweb/assets/sigmaaldrich/marketing/global/documents/129/678/j_flagtech19.pdf

FLAGタグの挿入部位とエンテロキナーゼの切断の反応性については下図を参考にして下さい。

sigmaaldrichのホームページよりhttps://www.sigmaaldrich.com/deepweb/assets/sigmaaldrich/marketing/global/documents/129/678/j_flagtech19.pdf

エンテロキナーゼの計算上の分子量は26.3 kDaですが、31 kDa付近に見えます。

バッファーは20 mM Tris-HCl, 50 mM NaCl, 2 mM CaCl2 , pH 8.0

エンテロキナーゼはカルシウムイオンが必要ですのでCaCl2が入っています。

25°C で16時間が目安となっています。

Factor Xa(第Xa因子)

このプロテアーゼも凝固止血で働く酵素の一つです。

17 kDaと42 kDaのタンパク質がSS結合しています。

バッファーは50 mM Tris-HCl, 100 mM NaCl, 5 mM CaCl2, pH 8.0

反応にはカルシウムイオンが必要ですので、EGTAやEDTAなどのキレート剤は使えません。

室温25℃で16時間が目安です。

TEV プロテアーゼ

TEVプロテアーゼはTobacco Etch VirusのNuclear Inclusion a (NIa) タンパク質の酵素活性部位です。

TEVプロテアーゼは最も一般的に使われているプロテアーゼで、glutathione S-transferase(GST)、maltose binding protein (MBP)、ストレプトアビジンタグなどとの融合蛋白質があり、種類が豊富です。

微妙に変異を入れて、オリジナルから派生した亜種もあり、分子量は25kDaから27kDa程度です。

バッファーは

50 mM Tris-HCl, 0.5 mM EDTA, 1mM DTT, pH 8.0

25 mM Tris-HCl, 200 mM NaCl, 14 mM β-mercaptoethanol, pH 8.0

ZnがTEVプロテアーゼの活性を阻害しますので、ジンクフィンガープロテイン(Znを含む)の切断などは注意する必要があります。

30℃付近で最も活性が高いですが、4℃でも切断可能です。

酵素の安定性も高いので、使い勝手のいい酵素です。

HRV3cプロテアーゼ

元々はhuman rhinovirus (HRV) type 14 由来の3C proteaseです。

大きさは22 kDaです。

バッファーは50 mM Tris-HCl,150 mM NaCl, pH7.5

この酵素もZnで阻害されますので注意が必要です。

4℃でも効率的に切断可能で、還元剤にも耐性があります。(2 mM DTTまでは阻害なし)

PreScission プロテアーゼ

PreScissionプロテアーゼはHRV3cプロテアーゼとglutathione S-transferase(GST)とのFusion proteinで、

カラム上で切断できるのがウリです。

切断条件などはHRV3cプロテアーゼと同じです。

SUMO プロテアーゼ(ULP-1)

SUMOはSmall ubiquitin-related modiferの略で、ULP-1はUbl-specific protease 1です。

SUMOタグをつけると、タンパク質の発現と溶解性が向上することが分かっています。

Marblestone, J. G. et al. (2006) Protein. Sci15, 182-189.

SUMOタグを切断できるのが、SUMOプロテアーゼ(ULP-1)です。

ULP-1はSUMOタグの直下で切断できるので、目的タンパク質に余分なアミノ酸が付きません。

バッファーは

50 mM Tris-HCl, 0.2% NP-40, 150 mM NaCl, 10 mM DTT, pH 8.0

30℃付近で最大活性があります。

温度は4℃では少し活性が落ちますが、16℃ぐらいでは問題ないようです。


実験プロトコール集

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