この記事について
DNAをゲル抽出する時に、UVが長く当たると変異が入ったりすることがありますよね。
この記事ではUVを当てることなく、アガロースゲルからDNAを抽出することができる方法を紹介します。
特殊な器具はまったく必要ありません。
この方法を使うことによってDNAがUVから受けるダメージを考える必要がなくなります。
市販のキットもあります
Invitrogenから「S.N.A.P. UV-Free Gel Purification Kit」という市販のキットがありますが、この方法ではそれと全く同じことを格安でできます。
アガロースゲルからのDNA抽出
クローニングをする時にアガロースゲルからDNAの断片を抽出することがあると思います。
DNAを可視化する時に、エチジウムブロマイド、SYBR Safe、 Gel Redなどを使うと思いますが、DNAに強い光が当たってしまい、特にUVを当てるときにはDNAへのダメージから変異が入ってしまうことがあります。
光を当てる時間をなるべく短くしたり、サンプルとゲルを2つに分けてUVがUVが当たっていないゲルの方の同じ高さからゲルを切り出したりして工夫している方もいると思います。
プロトコール
今回ご紹介する方法では、クリスタルバイオレットという色素を使います。
1%アガロースのレシピを紹介します。
- 0.5gのアガロースと50mlのTAEバッファーを混ぜます。
- 電子レンジでアガロースを溶かします。
- 2mg/mlのクリスタルバイオレット溶液を20から40ul加えて混ぜます。
- 通常通りのゲルを作ります。
6x サンプルバッファーの組成
- 30% グリセロール
- 20mM EDTA
- 100ug/ml クリスタルバイオレット
通常の電気泳動との違いはクリスタルバイオレットを入れるかどうかというだけですので非常に簡単です。
このゲルにPCRの反応液や、制限酵素で切ったベクターなどをいつもどおりに電気泳動するだけです。
DNA断片は肉眼で見えるので、その場所を切り出せばOKです。
切り出したゲルはお好みの方法で抽出して下さい。
私はQiagenのQIAquick Gel Extraction Kitを使っています。
実際のゲルの写真
少し見えにくいかもしれませんが、矢印のところにバンドがあると思います。

あとはこのバンドのところを肉眼で切り出すだけです。

ちょっとしたコツ
クリスタルバイオレットを用いたこの方法では、エチブロなどを使う方法よりも感度が悪くなります。
PCRのかかりが悪い場合などでDNA量が少ないときは、バンドが見えないことがあります。
バンドが見えなかったからといってDNAがないわけではありませんので、まだゲルを捨てないで下さい。
このゲルをエチブロなどで後染めすれば、UVを当てる通常通りの方法でDNAを切り出すことができます。
まとめ
クリスタルバイオレットを使って、DNA断片を肉眼で切り出す方法を紹介しました。
ご覧の通りで非常に簡単です。
UVによるDNA変異の心配なしでクローニングすることができますので、ぜひ一度試してみて下さい。
クローニング、遺伝子組み換えの基礎を深く学びたい人は、名著「Molecular Cloning」を一読下さい。
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