【ウエスタンブロット】泳動バッファー(SDS-PAGE用)、転写バッファーの組成と作り方

スポンサーリンク
実験プロトコル

この記事ではウエスタンブロットで使う泳動バッファー(ランニングバッファー)と転写バッファー(トランスファーバッファー)の組成と作り方について説明しています。

スポンサーリンク

泳動バッファー(SDS-PAGE)

SDS-PAGEのバッファーにはTris-Glycine バッファーBis-Tris バッファーがあります。

Tris-Glycine バッファーとBis-Tris バッファーの違い

Tris-Glycine (Laemmli バッファーシステム)

  • pH: 約8.3(ランニングバッファー)
  • 特徴: 古典的なSDS-PAGEシステムで、一般的なタンパク質解析に広く使用される。
  • 用途: 中〜高分子量タンパク質の分離に適している(10〜250 kDa程度)。
  • 注意点: 高pH環境では一部のタンパク質が変性しやすいことがある。

Bis-Tris (NuPAGEなどのシステム)

  • pH: 約6.4〜7.0(中性に近い)
  • 特徴: 中性条件下での分離が可能で、タンパク質の安定性が高い。
  • 用途: 低分子量タンパク質(3〜100 kDa程度)の分離に優れており、シャープなバンドが得られる。

Tris-Glycine バッファーの組成と作り方

最も一般的なTris-Glycine Running Bufferの組成と作り方を紹介します。

10X Tris-Glycineバッファーの作り方

Tris base30.0 g
Glycine144.0 g
SDS10.0 g
MilliQ waterto 1L
pHは8.3付近になっているはずですが、心配な方はチェックして下さい。使う直前に蒸留水で10倍希釈して下さい。室温で保存可能です。

意外と知られていないですが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は有害です。強力な界面活性剤でタンパク質の高次構造を壊して変性させてしまいます。低濃度ではその強い界面活性作用を生かして洗剤、歯磨き粉、シャンプーなどにも使われていますが、高濃度のSDSが眼や皮膚に直接接触した場合には強い炎症を起こします。発癌性はないようですが、取り扱いには十分注意して下さい。

Bis-Tris用バッファー(NuPAGE)の組成と作り方

NuPAGEの名前の由来は「中性」のNeutralからきています。

その名前の通りで、中性付近で泳動ができるため、タンパク質の修飾や変性が最小限に抑えられ、スマイリングが生じることが少なくなく、シャープなバンドが得られる特徴があります。

NuPAGEのバッファーにはMOPSバッファーやMESランニングバッファーを使いますので、それぞれの作り方と組成を説明します。

20X MOPS-SDS runningバッファーの組成

薬品名20xの濃度(mM)1xの濃度(mM)
MOPS209.3100050
Tris121.1100050
SDS2069.33.465
EDTA 二ナトリウム塩7.620.51.025

800mlのMilliQに上記の薬品を溶かします

NaOHでpHを7.0に合わせます

MilliQ で1Lにメスアップします。

20X MES-SDS runningバッファーの組成

薬品名20xの濃度(mM)1xの濃度(mM)
MES195.2100050
Tris121.1100050
SDS2069.33.465
EDTA 二ナトリウム塩7.620.51.025

800mlのMilliQに上記の薬品を溶かします

NaOHでpHを7.0に合わせます

MilliQ で1Lにメスアップします。

転写バッファー(Transfer Buffer)

Tris-Glycine系で最も一般的な転写バッファーの組成を紹介します。Towbinバッファーとも呼ばれます。

Tris3.0 g
Glycine14.4g
メタノール200ml
MilliQ 水to 1L
これもpHは8.3付近になっているはずですが、心配な方はチェックして下さい。このバッファーは薄めずそのまま使います。最終濃度は25 mM Tris, 192 mM Glycine , 20% v/v MeOHとなります。

タンク式、セミドライ式のどちらでも使うことができます。

このバッファーは私は何回か使い回しをして、4℃で保存しています。

高分子タンパク質の転写効率を上げたい時には、0.01-0.1% (w/v)ぐらいの低濃度のSDSを加えると効率が上がることがあります。

実験プロトコル
「実験プロトコル」の記事一覧です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました